保険診療
Top 最終更新日 2018/04/14

保険診療ってなんですか?

 医療保険制度

 疾病、傷害などが発生したときに、その治療のための医療を提供し、休業による所得の減少・中断を保障する社会保険制度のことを医療保険と言います。わが国では、政府管掌健康保険(協会けんぽ)、組合管掌健康保険、各種公務員共済組合、私立学校職員共済組合などの被用者を対象とする「職域保険」と、自営業者や無業者などの地域住民を対象とする国民健康保険のような「地域保険」があります。 これらの保険制度に基づいて行われる診療が保険診療です。
 医療保険は勤労者個人や事業主が、自由に契約・加入するものでなく、法律で加入が義務づけられています。
 健康保険への加入は事業所単位で行い、常時5人以上の従業員を使用する個人の事業所や5人未満であっても全ての法人の事業所を強制適用事業所といいます。これに対して個人経営の事業所で飲食店、サービス業などや従業員が5人未満であっても認可を受けて適用されるのを、任意適用事業所といいます。いずれも適用事業所に使用される人(臨時に使用される人などは除く)は、国籍、性別、年齢、本人の意思などに関係なく全て被保険者となりますので、強制的に加入しなければならないとされています。 これらのことを総じて「国民皆保険制度」と言います。
1961年(昭和36年)以来この国民皆保険制度によって、国民全員が何らかの医療保険に加 入する仕組みができています。
それでは諸外国ではどうなっているんでしょうか?アメリカを例に説明します。

 アメリカの医療制度

 アメリカには日本の健康保険のようなすべての国民が平等に医療を受けることができる制度は存在しません。いわゆる公的保険といった場合は65歳以上のシニアを対象としたメディケアと、低所得者プランのメディケアドの2つのみが挙げられます。
 通常は高額な医療費をカバーするために、自分で民間の保険会社や医療組織の保険に加入しなければなりません。民間の保険には企業が団体加入する医療保険のほかに、主に自営業者が加入するブルークロス・ブルーシールド、またはHMOという組織のマネージドケア型保険があります。日本人駐在員や留学生の場合も加入できますが、保険プランには膨大な選択肢があり、医療サービスや保険料にもかなりの差が出てきます。

まとめ 日本は皆保険制度。

それでは保険診療を取り扱うのにはどうしたらいいのでしょうか?

健康保険取り扱い指定医療機関

【詳細】 保険医療機関・保険医指定・更新

 保険診療を取り扱うのには、診療する歯科医師が「保険医登録」することと、診療する医療機関が「健康保険取り扱い指定医療機関の登録」をする必要があり、これを二重指定と言います。
 これらを定めた法が「保険医療機関及び保険薬局の指定並びに特定承認保険医療機関の承認並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令」です。

 保険医が診療を行う場合には以下のようなケースが考えられます。

 ケースその1 
自院(当然保険医療機関)で、保険医が診療を行う場合。

● 保険で給付されている診療については、保険診療を行わなければならない。
● 保険で給付されていない診療に対しては、私費診療が可能である。しかし、一診療(この基準が曖昧なんですが)において、保険と私費が混在する混合診療は認められていない。
  この混合診療禁止に関しては
99年の何月号だったかの「日経メディカル」に特集されており、その中に【混合診療の禁止を直接うたった法令はない。にもかかわらず混合診療禁止のルールは存在する。これは、1984年の健康保険法改正時に、特定療養制度が新設されて以後、特定療養費の反対解釈として、「混合診療の禁止」ルールが成り立つことがはっきりした。】と言う記載が有りました。
我々歯科においては、現在の治療水準に対して保険で給付される範囲がかなり限定されており、常に「どの様な治療を患者が希望するかを確認」しなければ、トラブルの原因になります。その代表的な例が「白い歯で被せるか」「金属で被せるか」です。
歯科における代表的な私費診療2例を挙げます。
● 前歯に白いセラミックを被せる場合 ⇒ 完全に私費診療。
● 金属でできた総義歯を入れる場合 ⇒ 特定療養費として保険給付相当分は保険給付となり、差額分は私費診療となります。

 ケースその2
他院(保険医療機関)に出向いて、保険医が診療を行う場合。

この場合はケースその1と同じでしょう。

 ケースその3
他院(非保険医療機関)に出向いて、保険医が診療を行う場合。

この場合の診療は保険診療と見なされませんので、保険診療としての請求は不可能です。

尚、保険医療養担当規則 第19条(使用医薬品及び歯科材料)の
2 歯科医師である保険医は,厚生大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。ただし,別に厚生大臣が定める場合においては,この限りでない。

については
「2 歯科医師である保険医が保険診療を行う場合には、厚生大臣が保険診療材料として定めた歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。ただし,別に厚生大臣が定める場合においては,この限りでない。」

と言うのが現在の実状では無いでしょうか。
 そうでないと、保険医は前述の「金属の総義歯」や「セラミックの冠」による治療を行えない事になり、われわれ歯科医のほとんどが違法行為をしていることになり、行政もそれを知りながら見過ごしていることになります。もちろんこれらの材料は保険材料としては認可されていませんが、歯科診療材料としては認可されていますけど。

これは、法改正が世の中の流れに追いついていない一事例だと思います。

 ケースその4
診療所以外に出向いて、保険医たる医師が診療を行う場合。

● 保険医療機関の診療行為として、所属する保険医が往診(訪問診療)を行った場合には、医療法1条でも認められており、医療機関内で診療行為(あくまでも事務手続き上)が行 われたこととし、診療報酬の請求は保険医療機関で行い、保険上も医療法上も問題は無いようです。

● 保険医療機関に所属していても、その医療機関の診療行為としてではなく、アルバイト等の行為として医療機関以外において診療行為をした場合。
  この場合は、以下の問題が有りそうです。
(1) 医療機関以外での継続して診療行為を行う場合には、医療法 第8条〔開設 の届出〕、の手続きが必要ではないのか?
(2) もしその医師が公立病院の医師である場合には副業禁止規定の問題がありそうです。

それでは、医療は医療機関においてでないとできないんでしょうか?もちろん救急処置などは除外してですが。

医療法の第1条の2(医療提供の理念)に

2 医療は、国民自らの健康の保持のための努力を基礎として、病院、診療所、介護老人保健施設その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能に応じ効率的に提供されなければならない。

とあるので、医療機関でなく又患者の家でもない医師の自宅等や学校等で行う行為は違法と見なされるおそれがあります。
※ 学校における医療行為は学校保健法の裏付けがある。

 ケースその5
非保険医が保険医療機関に出向いて診療する場合にも、保険診療とは認められません。しかしこの場合は、その保険医療機関の保険医が診療したと言うことで保険請求が行われているのが実状ですので、表面には出てこないようですが。
 医療や保険に関しては規則として明文化されていない事も多く、歯科医師会などで口頭で申し渡されただけの規則が一人歩きしているルールも多いのです。
 この他にも様々な条件において保険・私費という区別は常につきまとってきます。

まとめ 保険診療は「保険医」と「保険医療機関」の二重指定である。

【参考】 保険医療機関の諸届

保険診療のルール

【詳細】 医療保険 ・ 歯科・青本もどき

 保険医として診療する場合には、前述の「混合診療の禁止」を始めとして様々なルールのもとに行わなければなりません。

 事務手続き上のルール
 診療に際しては、「受診者の保険資格を確認(療養担当規則3条)」し「法で定められた様式の診療録の作成と保存(療養担当規則8条・9条)」・「一部負担金を受領する義務(健康保険法74条・療養担当規則5条)」がある。

 診療上のルール(基本的保険診療の規則)
 法で定められた材料を使い、厚生大臣の定めた療法で(療養担当規則18〜21条)診療しなければならない。
 中には、旅行中で保険証を持参せず急患で来院するケースも有り得ます。その時はどう対処したらよいでしょうか?保険診療の取扱の本則としては、療養担当規則3条にあるように、患者の持参した被保険者証でその受給資格を確認しなければなりませんが、緊急の場合には保険資格の確認がなされれば被保険者証の確認は必要ないとされています。例えば会社員が会社に発行してもらう証明書などがそれに当たるでしょうか。

 これらの方法により受給資格の確認ができない場合にはどうしたら良いでしょうか?それは、個々の医院の対処によるところによりますが、自費診療にて取り扱うケースもあるかと思われます。それでは、被保険者証を持参せずに受診した患者に救済措置は無いのでしょうか?健康保険法は44条の2において、やむを得ない場合の保険外診療に対して、療養費払いという救済処置を用意してあります。
 実際、当院においては「無保険で自費診療した患者が、当院の領収明細書をもとに、後に国民健康保険に加入した際に療養費払いを受けた」例を確認しています。

 又保険資格を証明する書類に「被保険者資格証明書」と言うのがあります。これの取扱いにおいては以下のような注意が必要です。
(注意)保険診療として取り扱って構わないが、治療費全額を医療機関の窓口で授受する。よってレセプトによる保険者への請求は生じない。

この他にも、保険診療には様々なルールがあります。

まとめ 保険診療は決められたルールのもとに行わなければならない。

それでは以下に、具体的な保険診療上の事務取扱について記載してみたい。

■ 診療録(通称:カルテ)の作成 【詳細】 カルテの作成

■ 診療報酬請求明細書(通称:レセプト)の作成 【参考】 レセプトの作成 ・ レセプトの作成

(1) レイアウトや大きさなど詳細にわたって決まっています。 

■ 疑義解釈

(1) 保険診療における点数の算定法などは詳細に定められており、その内容は社会保険研究所刊の「歯科点数表の解釈」によってみることができます。しかし、それらの内容は複雑にわたるため、疑義解釈というものがあり、点数改正時などを中心として厚生労働省から正式なものが発表されます。その他にも、各県の審査委員会からだされるローカルルールが存在し、地方毎の点数算定の不公平や不透明の原因となっています。
【参考】 疑義解釈

■ 点数改正
 保険診療の点数改正は原則2年ごとに行われる。最近では平成16年4月に行われた。しかし歯科の主要材料の一つの12%金銀パラジウムは相場による値動きが大きいので、6ヶ月毎に見直される仕組みとなっている。平成16年10月改定でも、平成16年1〜6月の計算基準価格が平成15年7〜12月に比べて10%以上の乖離(10%未満の時は改定は無い)があったとして改定されました。
※ 平成24年4月現在、5%以上の乖離で改定されるようになっている。

診療の申し込みと事務手続き

■  保険資格の確認
 受診者が保険医療機関で診療を希望する場合には、やむを得ない場合を除き、被保険者証の提示(健康保険法施行規則45条)をしなければなりません。
 そして、医療機関は被保険者証を確認(療養担当規則3条)しなければなりません。もちろん、現在の日本は国民皆保険であり、原則として皆保険に加入しているはずですから、被保険者証を確認せず見なし行為にて保険診療を開始しても法的に問題とされる事はほとんどありません。しかし、もし事後に保険資格においての過誤が生じた場合には医療機関の責任において処理せざるを得ません。また、被保険者証の確認は、初診時だけではなく毎月の月初め(正確には、被保険者証のカード化を踏まえ、受診毎)に必ず行い、それをカルテに記載するよう厚生労働省から指導がなされています。
 昔と違い、現代では人の移動や転職が多いため医療機関の知らないうちに保険資格が変わっているケースなどは日常茶飯事で、保険資格過誤の原因になりやすいので注意が必要です。
 また、まれに保険証でなく「保険資格証明書」を持参して受診する人がいるがこの場合の取扱いには注意が必要である。この保険資格証明書とは、一般的に保険料の滞納などをしている人に対して、保険証の代わりに保険資格の証明として発行されるものである。 この場合には、保険診療を行っても全額の徴収となります。 
【参考】 保険資格証明書について

 平成15年の時点で、保険資格過誤の数は月に40万件以上あると言われています。もちろん、この中には医療機関における保険証データの転記ミスもありますが、多くは失職後も勤務時の保険資格で診療していたなどの原因と言われており、不況の影響でその数は増加の傾向にあります。早急に、正しい資格確認のシステムの構築が望まれます。
 その試みの一つとして、保険証が保険資格カードとしてカード化され、政府管掌健保も平成15年10月から、順次個人毎のカード化されることから、そういった不便さも去る程度改善され財布の中に常時持ち歩く時代となろうとしているようです。それにともなって出された通知でも、「保険資格カードが受診ごとに確認する」とされており、今後「月初めに1回確認したからOKといった慣例」も崩れようとしているのである。

# もし保険証を持参しないとき
 保険診療を持参しない受診したときは原則として自費診療となります。しかし、世の中には緊急というケースがあります。例えば交通事故で救急車で運ばれたときなど、保険証を携帯していない場合もあります。こういったやむを得ない場合には保険資格の確認をせずに保険診療を行うことが認められています。しかし歯科診療のどの部分にこういった事例を当てはめるかは見解がわかれ、各医院のマニュアルによるところが多いと思われます。

@ 保険証を持参しないときは自費診療とする。
 この場合は、発行された明細書をもとに受診者は保険者に療養費払いの申請をすることになります。また、次回保険証を持参した場合、最初の日の分の差額を払い戻す必要はなく、保険証確認日より保険診療とし、再診から算定することになります。

A 全く初めての受診者は自費診療とするが、再初診の方は旧保険資格をもとに保険診療を行う。
 この場合、現在の保険資格が以前と同じか、そして保険資格がきれていないかという問題がありますので、速やかに保険証を持参して貰いましょう。一般には特別な理由がないかぎり、翌日持参してもらいますが、それがなされない場合には、無保険だったり、保険資格の変更で保険証の発行途中で持参できないなどの理由が考えられますので注意が必要です。

B 保険証を持参しない方にも無条件で保険診療を行う。
 次回保険証を持参してもらえば問題のないことなので、受診者の利便性を考えてこのような対応をするのも一つの方法です。なお、この場合「保証金」をとる医療機関もありますが、「お金も持ってこなかった」と言われたら、、、、どうしようもないですね。

# 保険資格と療養費払い
 初診時にしろ再診時にしろ、原則的には保険資格が確認されない場合には保険診療を行う必要はありません。つまり、自費診療となります。この場合、受診者は保険者に療養費払いを請求して後日払い戻しを受けることになります。【参考
 ただし、医療機関における自費診療費は保険医療費の10割とは限りませんから、保険の一部負担金相当額を除いた全額が払い戻しになるとは限りません。

■ 歯科診療録(カルテ)
 保険医療養担当規則第22条により、保険診療録(カルテ)の様式は定められている。現在ではカルテの大きさは特に定められておらず、A4が望ましいとされているが、以前からのB5でも差し支えはない。 

  診療録の作成の後に診療を行い、最後に会計を行ない、保険一部負担金の授受(健康保険法74条)をする。この時計算上10円未満の端数を四捨五入する。

■ 健康保険法
(一部負担金)
第七十四条  第六十三条第三項の規定により保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該給付につき第七十六条第二項又は第三項の規定により算定した額に当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない。
一  七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の三十
二  七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(次号に掲げる場合を除く。) 百分の二十
三  七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合であって、政令で定めるところにより算定した報酬の額が政令で定める額以上であるとき 百分の三十

2  保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金(第七十五条の二第一項第一号の措置が採られたときは、当該減額された一部負担金)の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保険医療機関又は保険薬局の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。

第七十五条  前条第一項の規定により一部負担金を支払う場合においては、同項の一部負担金の額に五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。

 会計に際しては、領収書および明細書を発行するようにとされています(平成24年4月現在)

 昨今の医療訴訟事例などによると、インフォームドコンセントの重要性と共に、その詳細を診療録に記載する事が求められているので、診療録の記載は今後益々複雑化するものと思われる。

# カルテ作成の基本的なルール
@ 決められた様式のカルテに記載する
A 黒又は青インクなどの消えない筆記用具で記載し、訂正の場合には修正液を使わず、二本線で消して追記する。
B 行間をあけないで記載し、一行について一診療行為を記載する。
C 所見や診療行為など以外(例えば次回の診療予定)などは記載しない。  ⇒ 平成16年4月改定に於いて、「か再診」については「現在の診療状態、今後の予定」などを記載するむね定められたので、事実上このルールは廃止とみなしていいでしょう。
D 診療後速やかにカルテを作成する。速やかにとは一般に「診療後24時間以内」とされている。
E カルテ記載に関しては定められた略称を使うことが可能です。

■  診療報酬請求書
 月々の診療が終わると、支払基金及び国保連に「診療報酬請求書(レセプト)」を提出して、診療報酬の請求をします。

# 基本的な提出書類(平成16年4月現在)
@ レセプト(診療報酬明細書)
A 社保請求書(平成16年4月現在2枚組)
B 国保請求書(各保険者毎に作成し、県によって用紙の色が異なる)
C 国保総括票(県内の保険者で1枚、県外の保険者で1枚作成する必要がある)
 請求書の提出期限は一般には翌月の10日ですが、地域によっては10日前に設定してあるところもあるので注意が必要です。(平成16年4月現在)

提出法は、支払基金や国保連に持参する他、郵送(一般には書留速達で送れと言われる)やオンライン請求(レセ電を含む)である。

# 減点・返戻
レセプトを提出すると、支払基金や国保連で審査を行い、請求内容に不備があると、その内容に応じて「減点」や「返戻」が行われる。もちろん、それらの減点や返戻に異議がある場合には再審査請求をすることが可能である。それらの方法の詳細は地元の支払基金や国保連に尋ねればわかるでしょう。

■  医療費の概算
 では保険医療でどのくらいの収入があるのでしょうか?
 診療点数は、初診料や再診料に代表される「基本診療料」と、ここの処置に対する「特掲診療料」からなる。具体的な診療点数や算定要件は、いわゆる青本といわれる、社会保険研究所刊の「歯科点数表の解釈」を参照頂きたい。また、解釈本としては、いわゆる赤本といわれる、医歯薬出版社刊の「全科実例による社会保険歯科医診療」をはじめ、何冊か発行されているのでそれらを参考にすると良いでしょう。
 社会保険研究所のHP: http://www.shaho.co.jp/shaho/

■ 消費者契約法と医療
 平成13年4月1日に施行された「消費者契約法」であるが、当初は「日本医師会」も「日本歯科医師会」も医療契約になじまないとの見解をだしたものの、その後これに関しての新しい情報はない。しかしながら、法的な裏付けが無い以上、消費者契約法を念頭においた診療契約を結ぶ必要があります。なお、この法の要旨は「契約の取消権」にあります。興味のある方は消費者契約法をお読みいただきたい。
 歯科医療においては、「保険診療と自費診療の問題」「差額徴収」「混合診療」といった場合、この法理念に関係して来る可能性があるので、御注意願いたい。たとえば「前歯は保険では治療できない」もしくは「前歯は保険では白いものをいれることはできない」などの事例が代表的であろうか。

歯科診療の実際

 皆さんは当然ご存じだと思われますが参考までに歯の基本的知識です。
 診療行為には大きく分けて、予防処置・歯内処置・歯周処置・修復処置・補綴処置・外科処置・矯正処置があります。

 歯科医療はハードウェア・ソフトウェア・ヒューマンウェアの3つの要素から成り立っており、その一つが欠けても受診者のニーズを満たす医療は不可能である。これは他の一般社会のサービスと同じであるのだが、ただ一つ医療サービスは数多くの法的制限の元に行わなければならないと言うことである。我々一般臨床医は常日頃から必要処置と保険の制約というジレンマと闘いながら診療を行っているのである。

■ 基本診療
 平成16年4月に生じた、中医協を舞台にした贈収賄事件では、贈賄の主体が日歯の幹部であり、その内容は「か診の算定条件の緩和」であることが物議を醸し出した。この根底には、「歯科初診」と「か初診」というように初診料が二つに分かれている問題があるのであるが、か初診の導入にあたっては、帳尻合わせのように他の特掲診療料の引き下げも行われており、ある一定割合「か初診」を算定しないと、収入源になってしまう現状があるのである。

 点数改定とは、他の業種のように「単に値上げ」と判断できない大きな仕組みが沢山あるのである。
たとえば、コンビニで「弁当とお茶」を10%値上げすれば、その他の条件が変わらなければ収入はその分上昇する。しかし、「お弁当とお茶は一緒に買ってはいけない」とか「一緒に買ったらお茶は50%OFF」とかのルールがあったらどうであろうか?保険点数の世界はまさにそれなのである。

■ 歯科関連の薬剤
 PerやPericoでは処置の他に投薬が必要となることも少なくありません。昔はそんなにうるさくは無かったのですが、平成14年4月の改定を機に、摘要欄に投与薬剤名を記載しなければならなくなったため、歯科適用薬剤でないと保険請求として通らなくなってしましましたので御注意下さい。
【詳細】 保険適用薬剤・材料

■ 予防処置
# シーラントの保持率: 参照データ

■ 歯内処置
# 亜砒酸の使用時の後遺症に対する訴訟でこのような判決がありました。判例は、亜砒酸の使用に対してのものですが、他の薬剤の使用においても同様な注意義務が必要なのはいうまでもありませんので御注意を。

■ 歯周処置
# カンジダ菌除菌による歯周病の治療を行っている歯科医院がある。学術的なEBMはともかくとして、保険診療とのかねあいで混合診療などにならないように注意が必要である。 
【参考】 抗真菌剤を使用した治療について

■ 修復処置
# レーザーによる窩洞形成と充填処置は高度先端治療の認定を受けている医療機関においてのみ選定医療でで行える。保険医療機関で自費行うことは不可である。 

■ 補綴処置
# 修復物などの保持年数: これは製造物の耐用年数とは違いますので御注意下さい。あくまでも、口の中に存在する平均年数です。たとえば、4番にインレーを入れたが、1年後に5番を抜歯したため4番のインレーを除去した場合などは、保持年数1年となるのでしょうね。
# 補綴物維持管理料: 特定の施設基準の届出をした歯科医院に適用される制度で、一度作製した「冠」や「ブリッジ」を原則2年保証(保証という言葉は医療になじまないが)しなければならない制度で、2年以内に不具合が生じた場合には、無料(基本診療料などは算定可)で再製しなければなりません。

■ 外科処置
# 外科処置において、血液飛沫の発生は日常茶飯事であり、感染予防については充分注意が必要です。血液飛沫が目の粘膜に付着して肝炎が感染したという事例もあります。注射針の針刺し事故に加えて、飛沫感染にも充分注意が必要なことは言うまでもありません。その対応としては、「ゴーグルの使用」「口腔外バキュームの使用」などの方法が考えられるでしょう。
# なお、注射器の針刺し事故の防止には「エームセーフ(モリタ)」や「針パックン(うちで使用している自動針抜き保管器)」などを使用することが有効でしょう。

■ 矯正処置
# うちは矯正をやっていないので、よくわからないなぁ〜(^^)

■ 資格外診療
# 平成16年6月現在、某地方にて「アトピー性皮膚炎やがんなど万病の原因は歯」などとの治療が行われているようですが、以前東京でも類似例が発生し、平成16年4月に「傷害・詐欺・医師法違反」などにより、懲役2年6ヶ月・罰金80万円の判決がでていますので十分注意が必要です。
またNet上の掲示板などにおいても、衛生士の職務範囲を論じていることが時々見受けられます。その内の大きなポイントの一つが歯科衛生士の職務範囲です。
 歯科衛生士の職務範囲は、主として歯科衛生士法第2条で扱われています。たとえば、「一 歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によって除去すること。」をもって、歯科衛生士の職務範囲を狭くとらえているケースが多いようですが、「2 歯科衛生士は保健婦助産婦看護婦法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすこと業とする事ができる。」における、診療補助をどう解釈するかによって、その業務範囲は流動的なのです。
例えば、看護師が保健師助産師看護師法、第5条この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」をもとに注射などの医行為(正確には相対的医行為)を行っているのと同じなのです。つまり、間接的歯科医行為のどの程度まで合法的に行えるかという判断で、それらは衛生士という資格のみならず、経験年数や習熟度などによって流動的であるとされています。
【参考】 歯科衛生士の職務範囲
一般社会通念によると、医行為とは「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」とされている。これは判例としても「最高裁判所昭和30年5月24日」であきらかにされていますが、直接的または間接的医行為(歯科医行為)とはどのようなものであるかは、こちらを御覧下さい。

■ 医療用具(医療機器)
# 私たちが実際に診療を行うときに使用するものに「医療用具」があります。医療用具とは、薬事法第2条第4項で、「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている器具器械であって、政令で定めるもの」とされています。しかしながら、薬事法では医療用具の製造や販売について規制しているだけで、実際の診療においてどのような医療用具を使うべきか、又医療用具でないものを使っては行けないのか?などの疑問には応えてはくれません。
例えば、口腔内カメラとして売り出しているものの中にも、医療用具の認可をとったものと、認可をとっていないものがあるのです。これは非常に紛らわしいのですが、理論的には「医療用具の認可をとったカメラ」では診断を下すことが可能だが、「医療用具の認可をとっていないカメラ」では、診断を行うことはできず、単なる資料収集や患者さんへの説明などに限定されることになります。
 その診療が、保険診療となるともっと複雑になります。たとえば、薬事法の承認を受けていても、それを個人輸入した場合などは、自費で使うのは可能だが、保険診療で使うことはできません。
 また、こういったこともあるでしょう。「外科用のピンセットの代わりにホームセンターから買ってきた一般のピンセットを使う」「咬合紙の代わりに事務用のカーボン紙を使う」「印象用のシリコンの代わりに、工業用のシリコンを使う」。
これらに関しては、薬事法は関与していません。しかし、法は専門家たる医師・歯科医師がその専門性において充分な安全知識を持って医療を行っているということを期待し、そして前提としています。従って私たちも、そういった期待を裏切るような行為をしてはいけないのです。
 なお、平成17年4月から、改正薬事法が施行され、「医療用具」という名称が「医療機器」に変わりましたので御注意下さい。

■ 混合診療
# 混合診療とは、「一連の診療の中に保険診療と私費診療が混合されること」で、たとえば「保険のレジン床総義歯を作製したが、その中の一部の人工歯を自費で金歯にした」などが代表的であり、診療上の禁止事項とされています。


【資料集】

■ カルテについて

■ 歯科医院の掲示義務

■ 保険医取消状況

統計表示