未収診療費の回収処理
Top 最終更新日 2018/04/14

診療費の請求時効は3年である。
(参考データ)
★ 民法第170条〔三年の短期消滅時効の債権〕 ⇒診療費の時効の根拠
左に掲けたる債権は三年間之を行はさるに因りて消滅す
一 医師、産婆及ひ薬剤師の治術、勤労及ひ調剤に関する債権

★ 診療費の請求、支払の時効(昭和26.3.6 保発43)
保険医が政府に対して有する診療報酬請求権の時効は、(中略)、民法第170条の規定により、3年間之を行わないことによって完成する。

★ 請求時効の起算日(昭31.3.13 保文発1903)(昭35.4.23 保文発3085)
療養費の請求権が発生し、かつ、これを行使し得るに至った日の翌日から起算する。
例えば、平成17年2月分は3月1日が起算日。

時効が間近に迫った場合には、何らかの手段で時効の中断を図らなければならない。この場合一般には「内容証明郵便」等による請求が行われる場合が多いが、実際にはこれだけでは不十分なのである。この「内容証明郵便による請求」は民法147条の「催告」にあたるが、同法153条によると6ヶ月以内に法的処置をとらないとダメだと記している。

この様に、内容証明郵便の効力には疑問があり、できれば同法147条第3項の「承認」が一番適切であるとされている。
# 承認の具体的事例
 たとえば、債権者が債務者に「**月**日現在の 御社の当社に対する未払い金について間違いが無いか確認の上、記名捺印して返送してください。」といった文書を送付し、債務者が返送した時点で「債務の承認」が有効となる。
※ 歯科や薬品の業者からこういった文書が送られてきて返送する場合があるでしょう。あれがそうです。

A 保険診療における未回収債権の処理

保険診療において診療費を受けるべき先は以下の通りである。

保険の現物給付の対価として 一部負担金として
(1) 支払い基金又は国保連 (2) 都道府県の単独医療扶助として(身・乳・母)
(3) 受診者本人より

上記の(1)(2)に付いては通常未回収債権(不良債権)が生じるケースは無い。(3)受診者本人からの一部負担金については以下のケースで未回収債権(不良債権)が生じる場合がある。

A 受診者がその債権の存在を認識していないケース
具体例 (1)その月のレセプト請求時に請求の誤りを修正した場合。例えば、カルテ上KP(単)40点と書いてあったが、実際はKP(複)で有ることが判明し20点分60円の未収金が生じる場合。
(2)レセプト審査の減点等により点数に修正が加味された場合。
言うまでもないがこのケースに於いては未収金だけでなく、返すべき金額が生じる場合もある。
対応法 このケースは一般に金額も少額であり、ことさら未収金として認識する必要は無い。しいて言えば次回来院時に過不足額を調整するぐらいであろう。

一部の公立病院などにおいてはこういった過不足額についても請求のハガキを送付することが有るようだが、受診者は未払い金が残っていると言う自覚が無いのでトラブルの原因となり得る。一般の診療所においては行わない方が無難だと思われる。

B 受診者がその債権の存在を認識している一般のケース
具体例 受診者が診療を受けた際財布を忘れた若しくはお金が足りないなどの理由により未収金として残った場合。
予防策 この場合は受診者が未払い金を認識しているので、ほとんどの場合には次回の来院時において支払われる場合がほとんどである。しかし、財布を忘れてきた場合はともかくとして、お金が足りないケースにおいては受診者が診療時に必要な金額を予測できないと言うことにも原因がある。特に、Brや義歯を装着の場合には金額がかさむ場合が多いので、「次回はBrを入れますので○○○○円位かかります。」と予告しておくことに依って多くは予防可能であろう。
対応法 この場合においてもある割合に於いて未収金が残ることがある。この場合は以下のケースに分類される。
(1) 経済的理由により受診者に支払い能力が欠けている場合。
(2) 受診者がただ単に忘れている場合など。
(3) 受診者の意志において故意に支払われない場合。

(1)は各医院の考え方において個別に処理すれば良い。
(2)(3)は最初から区別が付かない場合がほとんどと思われる。この場合は各医院における通常の請求業務を行うこと。それにも係わらず支払われないものを「不良債権の処理」として取り扱う。

C その他の未収金のケース
具体例 (1) 従業員の治療費の一部負担金を徴収しない場合。
(2) 知り合い等の治療費の一部負担金を徴収しない場合。
※ これらはどちらも違法行為である。
対応法 保険診療の一部負担金については値引きすることは認められず、又仮に一部を受領しなくても全額が診療費として見なされ課税対象となる。そこで通常は以下のように処理する。

関係者の診療時には一部負担金を受領した事として計上する。ついで以下のように処理する。
(1) 従業員の一部負担金においては福利厚生費として経費処理する。 ⇒ これも問題になる場合があるので注意が必要である。
(2) その他の場合においては、相手方の内容によって交際費として経費計上する。しかし交際費として認められる場合は少なく、ほとんどは事業主貸しとして処理することになる。こういったことは意外にある人もいるでしょう。

D 注意を要する未収金
具体例 未装着物の一部負担金。
対応法 これは本来請求可能な未収金であるが、診療契約に係る基本的な争点が生じる場合が有るので請求せずに貸し倒れ処理する必要がありそうだ。

不良債権の具体的処理法

一般的な未収金の処理の一例を以下に記載する。(あくまでも例である)

98/06/16 患者(A)が義歯を入れて診療を終了した。一部負担金については、財布を忘れたとの理由で未収金として残った。
  通常は数日中に支払いに来てくれることがほとんどである。
98/09 末 最終来院日より3ヶ月待っても支払いが無いので請求のハガキを送付。
もちろん3ヶ月にこだわる必要はなく1ヶ月でもそれ以外でもかまわない。又請求法もハガキにこだわらず電話でも良い。これはそれぞれの医院の規定による。
  請求書の送付ににも係わらず支払いの連絡は無い。
98/12 末 1回目の請求日より1ヶ月後支払いが無いので再度の請求のハガキを送付。
  再度の請求書の送付ににも係わらず支払いの連絡は無い。
2度の請求にも係わらず音沙汰がない。ただ単に支払いを忘れているだけでは無いようだ。
99/01 末 2度の請求にもかかわらず連絡がないので通常の未収金処理から「事故債権」扱いへ移行。

具体的対応
(1)ハガキなどによる通常の請求業務は受付事務に任せても差し支えないが、「事故債権」の処理はトラブルの防止のため医院の管理者の決済において行う必要が有る。
(2)具体的には「配達証明郵便」「内容証明郵便」等の方法により封書にて再度の請求処理を行う。このような手段を取るのは「請求の通知が先方に届いている」事を記録に残すためである。これは債務の返済の時効を中断する方法の一手段である。

  このような請求を行ったにも係わらず進展しない場合には以下の方法を取る。
手段 1 一定期間経過後税務上の規則に則って「貸し倒れとして処理」する。
手段 2 保険者に請求する。 参考 時効 保険者への請求の根拠

この場合診療の都度(以前は月初めの1回でよかったですが、今は診療の都度ですよ)保険証の確認を怠っていると、こちらの過失を問われる可能性があるので注意すること。

手段 3 民事訴訟により請求する。

 備考

配達証明郵便 相手に配達された証明付きの郵便。
内容証明郵便 どのような内容の文書を出したかを郵政省に証明してもらえる制度があり、それを利用して出される郵便物を内容証明郵便といいます。
民事訴訟 少額訴訟 
民事紛争の解決手段 参考資料

 参考 関係法令

健康保険法 第43条の8(一部負担金) ⇒一部負担金授受の根拠
(1)第43条の3項の規定により保険医療機関又は保険薬局に就き給付を受ける者は、其の給付を受ける際当該給付に付き第43条の9第2項又は第3項の規定に依り算定せらるる額の百分の二十に相当する額を一部負担金として当該保険医療機関又は保険薬局に支払うべし。

(2)保険医療機関又は保険薬局は一部負担金の支払いを受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良なる管理者と同一の注意を以てその支払いを受けるべく努めたるに拘わらずその療養の給付を受けたる者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わる時は、保険者は当該保険医療機関又は保険薬局の請求により本法の規定による徴収金の規定に依りこれを処分することを得。(参考)国民健康保険法第42条

# 110701: 平成23年7月1日現在、保険者に請求できる保険一部負担金は60万円以上の場合のみ。

【出展】

厚生労働省の業務改善事例
(平成22年9月第4週までの報告分)

○改善事例2
国民健康保険の一部負担金減免基準及び医療機関等の未収金の保険者徴収の実施基準の改正

【概要】
● 市町村国保が条例により一部負担金を減免する場合の望ましい基準について、 収入基準の明確化等を行いました。
〔一部負担金の減免基準〕
災害、失業等により生活が困難になった場合であって、次のいずれにも該当する世帯
・入院療養を受ける被保険者がいる世帯
・世帯主及び当該世帯に属する被保険者の収入が生活保護基準以下であり、かつ、預貯金が生活保護基準の3月以下である世帯

● また、医療機関の一部負担金の未収金を保険者が代わって徴収する制度について、
・医療機関において電話催促、内容証明郵便による督促、自宅訪問等を実施していること
処分の対象となる一部負担金の額が60万円を超えるものであること
等の実施の前提条件を明確化しました。
(9月13日実施)

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000slm8-img/2r9852000000slpq.pdf   

問13 保険者徴収の対象として「一部負担金相当額が60万円を超えるもの」が掲げられているが、なぜ60万円を超えるものとしたのか。
(答)
民事訴訟法(平成8年法律第109号)第368条第1項においては、60万円以下の金銭の支払を目的とする債権については、簡易裁判所において少額訴訟を提起できるとしている。このため、60万円以下の一部負担金債権であれば、この少額訴訟を利用することにより、保険医療機関等は、保険料(税)への充当が優先される保険者徴収よりも優先して債権を回収できる場合があるため、保険者徴収の対象債権としては60万円を超えるものとしたものである。
なお、これはあくまで国として示した目安であるため、保険者の判断により、60万円以下の一部負担金債権について、被保険者の属する世帯が保険料(税)の滞納処分を実施する状態になくとも、保険者徴収の対象として差し支えない。

民法 第147条(時効の中断事由)
一 請求
二 差押・仮差押又は仮処分
三 承認

民法第170条〔三年の短期消滅時効の債権〕 ⇒診療費の時効の根拠
左に掲けたる債権は三年間之を行はさるに因りて消滅す
一 医師、産婆及ひ薬剤師の治術、勤労及ひ調剤に関する債権

民法 第404条(法定利率)
利息を生ずべき債権に付き別段の意思表示無きときはその利率は年5分とする。

民法 第414条(履行の強制)
(1)債務者が任意に債務の履行を為さざる時は、その強制履行を裁判所に請求する事を得る。但し債務の性質が之を許さざる時はこの限りにあらず。

(2)債務の性質が強制履行を許さざる場合に於いて其の債務が作為を目的とするときは、債権者は債務者の費用を以て第三者に之を為さしむる事を裁判所に請求する事を得る。但し法律行為を目的とする債務に付いては裁判を以て債務者の意思表示に代える事を得る。

(3)不作為を目的とする債務については債務者の費用を以て其の為したるものを除却し且つ将来のため適当の処分を為すことを請求することを得る。

(4)前3項の規定は損害賠償の請求を妨げず。

B 自費診療における未回収債権の処理

自費診療の未収金には以下のケースがある。ケース自費・保険から自費

A 一般の自費診療の未収金について
具体例 通常の自費診療を行った結果未収金が生じた場合。
予防策 自費診療の着手時点で前金をもらう方法があるが、これは「TEKを入れた後の未来院」を予防する手段になっても「装着後の未収金の予防」には無力である。
対応法 これは上記の保険一部負担金と同様の手順で処理すればよい。但し、言うまでもないが保険者への請求は不可能である。
B 疑似保険から自費に移行した診療費の未収金について
具体例 たとえば以前より通院している患者が、たまたま保険証を持参せずに来院し保険扱い診療を行ったが後に無保険であることが判明した場合。

当該診療は自費診療になり、一部負担金相当分受領額を除いた金額が未収金として残る。

対応法 (1)当該診療を自費診療として計上する。
(2)一部負担金相当分受領額分の保険一部負担金を減額修正して、自費診療費の一部入金として振り替える。
(3)患者へ連絡して残りの金額を請求する。
(4)もし円滑に支払われない場合には上記の保険一部負担金と同様の手順で処理する。

この場合保険の資格喪失が判明し過誤返戻となるのはレセプト請求後半年ぐらい経過してからなのでその後の処理に困ることもあるので診療の都度保険証の確認は励行した方がよい。
月初めに保険証を確認した後、月半ばに保険資格を喪失した場合にはその月の診療は、保険証を確認した日のみ保険診療として請求できるが、喪失日以降の診療で保険証を確認していない場合には、その分は請求不能。ただし、保険資格を喪失していても、保険証を確認していれば、摘要欄に「保険証を確認済み」といった内容を記載して請求可能である。

■ 参考資料(平成19年1月)

未払一部負担金の保険者徴収に関する事項について
厚生労働省保険局

1 現行制度の概要

 保険医療機関又は保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)から保険者に対し、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第42条第2項に基づく未払一部負担金の処分の請求があった場合の取扱いについては、通知において、保険医療機関等の開設者は、「善良な管理者と同一の注意をもって被保険者から一部負担金の支払を受けることにつとめたことを証明しなければならない」とされているとともに、善管注意義務が尽くされたかどうかの認定に際し、療養の給付が行われた際に一部負担金を支払うべきことを告げるのみである等のような場合には、「当該注意義務をつくしたものとは認められない」旨お示ししている(「一部負担金の徴収猶予及び減免並びに療養取扱機関の一部負担金の取扱について」(昭和34年3月30日付保発第21号))。
 また、健康保険法(大正11年法律第70号)第74条第2項に基づく未払一部負担金の処分の請求があった場合の取扱いについては、通知において、当該保険医療機関等が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払を求めたことを確認することとしており、当該確認の方法については、「例えば、内容証明付き郵便により支払請求を行った等の客観的事実に基づき行うこと」旨お示ししているところ(「健康保険法等の一部を改正する法律等の施行に係る事務取扱いについて」(昭和56年2月25日保険発第10号・庁保険発第2号))。

2 管内市町村関係課に対する周知

 上記の取扱いについては、管内市町村関係課に対し適切に周知方いただいているものと承知しているところであるが、今般、改めて関係機関に周知徹底すべき、との指摘が国会等においてなされたことを踏まえ、改めて関係機関への周知を行うこととしたと
ころであり、管内市町村関係課への周知方お願い申し上げる。

(参考1)
◎ 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
第42条 (略)
2 保険医療機関等は、前項の一部負担金(第四十三条前項の規定により一部負担金の割合が滅ぜられたときは、同条第二項に規定する保険医療機関等にあっては、当該減ぜられた割合による一部負担金とし、第四十四条第一項第一号の措置が採られたときは、当該減額された一部負担金とする。)の支払を受けるべきものとし、保険医療機関等が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお被保険者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保険医療機関等の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。

◎ 健康保険法(大正11年法律第70号)
第74条 (略)
2 保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた暑が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保険医療機関又は保険薬局の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。

(参考2)
◎ 「一部負担金の撤収猶予及び減免並びに療養取扱機関の一部負担金の取扱について」(昭和34年3月30日付保発第21号保険局長から各都道府県知事あて通知)(抄)
第一(略)
第二 療養取扱機関の一部負担金の取扱
(略)
ニ 善良な管理者と同一の注意
療養取扱機関が法第四十二条第二項の規定による保険者の処分を請求しようとするときは、当該療養取扱機関の開設者は、善良な管理者と同一の注意をもって被保険者から一部負担金の支払を受けることにつとめたことを証明しなければならないこと。
(中略)
次の各号に掲げるような場合は、当該注意義務をつくしたものとは認められないものであること。
1 療養の給付が行われた際に一部負担金を支払うべきことを告げるのみであること
2 各月分の診療報酬の請求前に単に口頭で催促すること。
3 再診の場合に、催促しないこと。
第三 (略)

◎健康保険法等の一部を改正する法律等の施行に係る事務取扱いについて(昭和56年2月25日保険発第10号・庁保険発第2号)(抄)
第一・第ニ (略)
第三 未払一部負担金の保険者徴収に関する事項
1 保険医療機関から保険者に対し、未払一部負担金の処分を請求があった場合、保険者は保険医療機関が善良な管理者と同一の注意をもって一部負担金の支払いを求めたことを確認のうえ当該請求を受理するものであること。
 この場合において、善良な管理者と同一の注意とは保険医療機関の開設者という地位にある者に対し、一般的に要求される相当程度の注意をいうものであり、その確認は、例えば、内容証明郵便により支払い請求を行った等の客観的事実に基づき行うこと。
2〜3(略)
第四・第五 (略)

 

統計表示