プリオン病感染予防ガイドライン
Top 最終更新日 2017/09/02

「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」について

医政指発第0912001号
平成20年9月12日
厚生労働省 医政局指導課長

第7章歯科治療

                         
日本歯科医師会常務理事太田謙司
日本歯科医師会常務理事高木幹正
東京医科大学口腔外科小森康雄

 ヒトの唾液や口腔組織から異常プリオン蛋白が検出されたとの明らかな証拠はない。また孤発性CJD と診断された患者8名の歯髄組織からも異常プリオン蛋白の検出はされなかった。さらに現在ま で歯科医療従事者が職業的な接触によってCJDに感染したとの報告もない。このように歯科医療行 為によりCJDの感染が起こりうるという証明はなされていない。
 しかし口腔に隣接した組織である扁桃や周囲のリンパ組織はやや高い感染性を有することが知ら れており、口腔外科的な処置の場合には職業感染や器具を介した患者間の感染のリスクも否定でき ない。さらに、スクレイピーに感染しているマウスのホモジネートされた脳組織を健康なハムスターとマ ウスの口腔に曝露することにより、感染が成立したとの報告も存在する。この実験結果からは異常プ リオン蛋白に汚染された器具を使い、患者の口腔内に外科的処置を加えると感染が成立する可能性 を示唆している。ハイリスク手技ではない歯科臨床上でCJDの感染成立の可能性は極めて低いと考 えられるものの、やはり充分な感染対策は必要と言わざるをえない。
 感染予防には一般的な感染対策で行われているスタンダードプリコーションの手法はここでも変わ るものではない。感染の成立を阻止するための確実な滅菌とバリアーテクニックが必要となる。しかし 微生物では無菌保証レベルに達することのできる一般的な滅菌方法は、CJDの原因である異常プリ オン蛋白には無効または不完全とされている。

CJD患者に対する感染予防処置の際考慮すべき事項
 理想的には全ての使用器具を1回限りの使い捨てにすることが望ましいが、経済的観点から使い 捨てのものは限定される。

(1)ディスポーザブル製品
グローブ、シールド付きマスク、フェイスシールド、ピンセット、ミラー、ガウン、紙コップ、エプロン、ヘッドレストカバー、替え刃メス、スリーウエイシリンジの先、ラッピング用品など、また通常はディスポではないものの入念な洗浄が困難と考えられる器具(バー類や根管治療用器具など)も1回ごとの廃棄が推奨される。
※ これだけでも凄いコストだねぇ。肝炎やエイズ患者の治療もそうだが、こういった感染症患者の治療に際しては、外来環境加算の病名毎のさらなる加算が必要じゃないだろうか?

(2)加熱可能な器具類
CJD二次感染予防に関する対策検討会報告書ハイリスク手技に用いた手術器具を介する CJD二次感染予防についてに記されたハイリスク手技に用いられた手術器具等に対して現時 点で推奨される処理方法に準じると、加熱可能な器具類の処理は、
 ‥切な洗浄+3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)3〜5分煮沸処理、その後機器に応じて日常 的な滅菌
◆.▲襯リ洗浄剤を用いたウォッシヤーディスインフェクタ(90〜93°C)洗浄十プレバキューム方 式によるオートクレーブ134°C 8〜10分、またウォッシャーディスインフェクタを用いることが出 来ない場合には、適切な洗浄剤による充分な洗浄十プレバキューム方式によるオートクレー ブ134°C18分もありうる、というものである。
 しかしSDSによる煮沸処理は歯科領域の器具類に与える影響が未確認であるため、エアータ ービンでは耐久テストや材質の改良等が必要と思われる。またプレバキューム方式によるオート クレーブ134°C8〜10分も条件としてはやや厳しく、このため歯科臨床上感染対策ではもっとも問 題となるエアータービンにおいては、これも単回使用の製品を使用するしか選択肢はなさそうであ る.。

(3)洗浄の徹底
 器具に付着した汚染物は乾燥すると滅菌効果を大き<減ずることから、再使用する器具では処 置後器具を湿潤状態に保ち、滅菌前には必ず適切な洗浄により血液や組織片等をできる限り除 去する。異常プリオン蛋白では特にこの点が強調される.。

(4)薬液の使用
加熱不可能な器具は薬液の使用となる。薬液で有効とされているものに1規定水酸化ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウム(20,000ppm)で浸漬時間1時間、が挙げられている。印象物の消毒に も応用可能と考えられるものの印象面の精度などは未検証である。ラバー系の印象剤の使用が 勧められるが、そもそも薬液での不活化自体がCJDでは確立しておらず解決が難しい

(5)バリアー
バリアーテクニックの基本はメガネ、マスク、グローブであり、グローブも二重にしての使用が望 ましい。
またCJD患者の処置ではラッピングも必須である。処置時は口腔外バキュウムを使用する.。

(6)針刺し損傷
医療従事者が針刺し損傷などでCJDに感染したとの報告は無いが、全ての感染症で対応でき る針刺し損傷を防ぐマニュアルも作成しておかなければならない。
 他の感染症と基本的な感染対策手技に変わりはないものの、CJD患者の場合は使用器具の 滅菌法が異なっており従来の方法に更なる知識が必要となっている。 

統計表示