説明義務における過失の判決
Top 最終更新日 2017/11/13

■ 歯科治療上のミスについて、医療事故の状況の確認や患者への報告・説明をしなかったことも歯科医師の過失であるとの判決

・  山口地方裁判所 平成14年9月18日判決(判例タイムズ1129号235頁)

(争点)

・  医療事故後の歯科医師の行為に過失があるか

(事案)

・ 患者Aは、平成12年12月9日、右上6番の歯の歯冠部が食事中に取れ、同時に歯の部分もいくらか欠けたため、その治療のため、同月11日、Y歯科医師が開設するY歯科を受診した。
 Y歯科医師は、歯冠崩壊後のメタルコアによる支台築造を行うこととし、ポストを形成するため口蓋根に穴を掘ろうとしたところ、口蓋根の有無の確認を怠り、口蓋根がそもそも存在しなかったのに上顎骨を口蓋根と間違えて上顎骨を掘ったため、上顎洞内に穴を突き抜けさせ、いわゆる上顎洞穿孔を生じさせた。
 Y歯科のH歯科衛生士がメタルコアの印象を取るための印象剤の寒天を入れる作業を行ったが、その際、患者Aの歯牙の穴から上顎洞内に印象剤の相当量が迷入したため、上顎洞内穿孔と異物の混入を疑った。
 そして、Hは、Y歯科医師に対し、「針金がこれだけ長く入ったんですけどこのメタルコアはいいですか。針金が結構深いような気がするんですけど。」と伝えた。
 そこで、Y歯科医師は、ポストを掘る際に誤って穴が上顎洞内に突き抜けたため寒天を上顎洞内に迷入させたと疑い、再度、患者Aを診断したが、当該部位を視認したのみで、ワイヤーを穿孔に差し込んでの確認はしなかった。
 患者Aは、治療を受けた日の晩から、うがいをすると鼻から水が出てくるようになり、2、3日後には出てくる鼻汁は黄色に変化し、熱っぽく、頭痛、めまい、目のあたりがぼやける等の急性上顎洞炎の症状が出たことから、同月14日、Y歯科を訪れ、Y歯科医師に対し、症状を伝えたところ、Y歯科医師は患者Aに対し、医療過誤であることを認めた。

(損害賠償請求額)

 242万9760円  (内訳:治療費2万4300円+通院交通費5460円+将来の手術費用60万円+慰謝料150万円+弁護士費用30万円)

(判決による請求認容額)

 152万9760円  (内訳:治療費2万4300円+通院交通費5460円+将来の手術費用60万円+慰謝料70万円+弁護士費用20万円)

(裁判所の判断)

・  医療事故後の歯科医師の行為に過失があるか

 裁判所は、Y歯科医師が、医療事故の当日、H歯科衛生士の説明等により、患者Aの上顎洞内に印象剤が迷入したことを疑いを持ったことは当事者間に争いがないとの前提にたって、Y歯科医師には、適切な方法により、患者Aの上顎洞内に印象剤が迷入したか否かを確認し、かつ、その確認が得られた場合には、これを患者Aに報告、説明する義務を有していたものというべきであると判示しました。そして、Y歯科医師がワイヤーを穿孔に差し込んで確認することを怠った過失により、印象剤の迷入を確認できず、したがって、その事実を患者Aに報告・説明することができなかったと認定し、Y歯科医師に損害賠償を命ずる判決を言い渡しました。

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