診療契約
Top 最終更新日 2017/06/21

★ 診療契約の基本

@ (契約の時点)
 普通は医院の窓口で診療申込書に必要事項を書き込み提出し、医院の係が受け取ってカルテなどに記載を始めた時に、患者が診療の申し込みをし、医療機関がそれを受諾したという契約が成立したと解することができる。
 保険証を提示する時には、すでに保険医と保険者との間で、第三者である患者(被保険者)のために契約が締結されていて、患者はその契約に基づいて「保険診療」の申し込みをしたと考えられるのである。

注意) たとえば薬だけほしいと言った申し出に対して、無診察で処方箋を発行することは、元々「歯科医師法第20条」に抵触し、違法行為を内容とした契約は無効であり、診療契約そのものが発生しない。また診療費の請求権も発生しない。

A (契約によって生ずる債務)
 診療契約においては、他の契約とは異なり債務の特定が非常に困難で、「固定的・客観的な債務」と言った通常の取引とは異なり、流動的・可変的な債務と言われる。診療行為は金銭債務などのような単純なものでは無く、診断や治療という不確定的な要素を含むので、契約上の債務が特定しにくいという性質を持っています。
 診療契約は歯科医師(債務者)と患者(債権者)がお互いに協力し合って行うもので、双務契約とも言われます。つまり診療の成り行きによっては互いに債権者と債務者が逆の立場をとることもあり、たとえば、患者側に治療に協力する義務違反、あるいは指示に従わない義務違反があれば、患者側が債務者となり債務不履行を問われる事もあり得る。

# 双務契約における相互義務
 診療契約は双務契約であるから、医師の義務だけでなく患者の義務も生じる。
 その代表的なものが、対価(医療費)の支払・そして情報の提供義務である。
情報の提供義務の代表的な判例として「神戸地裁判決平成6.3.24」がある。
そこで、患者の協力や情報提供が、双務契約における法律上の義務となるかという点が問題となる。
これについては解釈が分かれ、
● 「患者の情報の提供が法的義務とされ、これを怠ると患者の債務不履行責任が問われ、患者の過失も問われる」と言う考え方。
● 「患者の情報の提供は信義上の問題での義務で、結果として債務不履行責任は問われないが生じた結果においては医師と患者における過失相殺が構成される。」と言う考え方。
が、存在する。そして現在では後者の考えが主流である。
つまり患者の債務不履行責任は生じないが過失相殺が生じるということであり、前述の判決においてはその過失相殺の割合は80%にも及んでいる。

また診療費においては、医療上必要な場合には前払いも請求できる。(民法649条)
ただしこれは一般論であり、保険診療において一部負担金の前払い請求ができると言うことではない。

B (契約の法的性質としては) 準委任契約
 手術や補綴などの治療行為を除けば、一定の事実行為、つまり事務の処理をするという意味で委任に準じた「準委任契約」であると解することができる。(神戸地裁竜野支部 昭42.1.25 判決より)
 手術については、一般の診療と異なって契約の範囲も限定されるし、目的もはじめから明確であり、事務処理と言うよりも、むしろ仕事を完成するという点に主たる目的がある。ただ成功の要素は当然には含まれない。法的には、「ある仕事の完成を約束する」契約を「請負い契約」と言う。しかし、家屋を建てるというような、単純な債務では無いから、単純な「請負契約」ということも言えない。
 この様に、診療契約の性質は場合に応じて、「準委任契約」「請負契約」と言えるが、契約の実行においては、現時点の医療水準に、おいて最大限に努力すべきであると考えられるのである。その履行に際し、責に帰すべき事由による損害については当然債務の不履行とされるが、結果が生じたということからだけの結果責任は問わないのは言うまでもない。
PS: 2000.04.28に「消費者契約法」が成立しましたので、この法の要件を満たす契約である必要が有ります。

C (未成年者の契約)
 患者が行為能力・意志能力を存する時には診療契約の当事者たりうるが、そのような能力を有していない乳幼児・精神障害者などの場合は当事者は親権者、その他の法定代理人である。
 ただ、行為能力を有しない未成年者であっても、医的侵襲の何たるかを理解できる者は契約の当事者と言える。
そうなると、未成年者の行為能力の民法上の解釈との間に差を生じることになるが、他の民法が予想している一般的な取引概念とは異なるので、取り消しうる法律行為に該当しないと考えるのが妥当である。
 ただし保険診療はともかく私費診療の契約に於いては「保護者の承諾」を取って行った方が良いのは言うまでもない。(民法第4条より)

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