モニタリング
Top 最終更新日 2017/06/21
歯科医療時の救急処置  

 うちでは、20年位前から生体モニターを導入して、有病者(特に高齢者)を中心に、モニタリングを行いながら診療を行って居ます。昨年、初代の生体モニターのカフの部分が劣化したので二代目を導入。そして、平成28年4月。口腔外バキュームのときもそうでしたが、時代が追いついてきたようで、「医管U」の新設ということで点数化されました。まぁ、うちとしてはあらたな設備投資が必要なわけではないので、早速施設基準をとって算定。ただ、対象病名が限定されているので行った全ての症例について算定できるわけではありません。それでも上出来ですねぇ〜。

■ モニタリングは、何も医療機器を使って測定するだけではない。広い意味では、患者さんが診療室に入ってくる時の歩き方や、話し方、顔色、その他いろいろな情報を得ることがモニタリングの始まりといってもいい。

■ 生体モニターの機能には大きく分けて「血圧」「心拍数」「SO02]「心電図」などがあります。口腔外科などでは、心電図付きのやつを導入しているところもあるようですが、うちのは心電図の無いタイプ。初代のやつは指カフだけのやつなので、歯科の診療中にも常時測定可能でしたが、なんでも最近は指カフの血圧測定は認可ならないとのようで、二代目は指カフ(SPO2)+腕カフのタイプ。機能的には初代に比べていいんですが、歯科の臨床上常時測定にはちょと難あり。歯科の臨床では、ユニットを起こしうがいするという動作が何度かあるため、そのため右手に装着した指カフを外さなければならない。ということで、連続した常時測定は不可能。保険的にも「イベント測定でOK」とのことで、うちでは専用の記録用紙を自作して「イベント測定」で対応しています。

■ 歯科治療の適応
@ 血圧が160/95以下、脈拍が100以下、SPO2が93以上: 全ての歯科治療が可能。
A 血圧が160-200/96-115、脈拍が100-130、SPO2が90-93: 慎重に歯科治療を行う。
B 血圧が200/115以上、脈拍が130以上又は50以下、SPO2が90以下: 全ての歯科治療を一旦中止し、経過観察や対応を行う。

■ 血圧

# どのような有病者でどのような値をとったときにどのような対応をとるか。最終的には主治医の先生の判断でしょうが、ある程度は医学的な指針があるようす。

# 血圧の変動因子
・ 心拍出量(収縮期血圧に影響)
・ 末梢血管抵抗(拡張期血圧に影響): 肥満や糖尿病、喫煙などによって末梢血管が細くなり抵抗が増す。
・ 循環血液量(収縮期血圧に影響・拡張期血圧に影響)
・ 血管壁の弾性(収縮期血圧に影響)
・ 血液の粘性(拡張期血圧に影響)

# 歯科治療時の血圧の変動の多くは、治療に対する「不安」「恐怖」「痛み」などによって交感神経系の緊張や迷走神経反射などによる自律神経系の変調、浸麻薬の血管収縮剤による。

# 高血圧・低血圧の基準値
・ 血圧は自宅で計測したときと医療機関で計測したときとで異なることがある。
(左は収縮期、右は拡張期)
・ 正常血圧: 130mmHg未満 かつ 85mmHg以上
・ 正常高血圧症: 130〜139mmHg 又は 85〜89mmHg
・ 軽症高血圧: 140〜159mmHg 又は 90〜99mmHg
・ 中等症高血圧: 160〜179mmHg 又は 100〜109mmHg
・ 重症高血圧症: 180mmHg以上 又は 110mmHg以上
・ 収縮期高血圧: 140mmHg以上 かつ 90mmHg未満

# 年齢と血圧の関係: 収縮期血圧は加齢とともに上昇し、加齢とともに減少する。特に70歳以上。また、高齢者は血圧の変動が大きい。
・ 座位と立位の血圧の変動が大きいときには起立性低血圧を起こすことがあり、収縮期で20mmHg以上、拡張期で10mmHg以上の変化が目安である。
※ うちで、こういった可能性がある場合には、椅子への乗り降りや、玄関での靴の履き替え時の急激な姿勢の変化、クルマの乗り降り時の急激な姿勢の変化などに注意を与えることがある。

■ 心拍数

# たまに、「徐脈」がみられ、それを患者さんに説明し、かかりつけの内科の先生と相談してということがあります。その結果、内科のなんかの薬の量を減らしたなどという事例も見られます。

■ SP2

# SPO2(エス・ピー・オー・ツー、経皮的動脈血酸素飽和度)
・ 他に、動脈血を採血して調べるSaO2(動脈血酸素飽和度)がある。
・ SPO2は、爪に光をあてて、動脈血の色を判断し、それを酸素飽和度(%)に置き換える。 → 【マニキュア使用者などは注意】【喫煙者のヘモグロビンには全体の数%から10%程度が一酸化ヘモグロビンといわれ、酸素飽和度に影響を与えるので注意】

# さて、問題は「SPO2」。どのくらいが正常で、どのくらいが異常で、どの程度になったらどういう処置が必要か。大体は理解していたつもりですが、現在あらためて勉強中。
・ 

# 100%がいいと思ったんだが、95〜97%あたりがいいという話もあるし微妙。酸素吸入をやり過ぎで過酸素になってもよくないみたいですしねぇ。

# うちの症例で、術前のSPO2は97%だったのが浸麻をしたら一気に88%まで下がったという事例があります。たぶん、浸麻針の挿入時の痛みとかで反応した可能性があります。そういった意味でも可能な限りの無痛処置は心がけましょう。

# 日本麻酔科学会の「安全な麻酔のためのモニタ指針」では、「酸素化のチェックについて」の項目に「皮膚、粘膜、血液の色などを看視すること」と記載され、「パルスオキシメータを装着すること」とあり、パルスオキシメータの使用を義務づけている。

# 2003年の厚生労働省の「歯科医師の救命救急研修ガイドライン」で、パルスオキシメータは心電計、血圧計とともに「非浸襲的モニターの装着及び検証」の項目で、研修医が実際に装着および検査を行うA(研修指導医又は研修指導補助医の指導・監督下での実施が許容されるもの)に分類されている。つまり、研修内容において歯科医師もパルスオキシメータを使用できることと、それを評価できることが担保されている。

# 低酸素症の原因
・ 高地・高山などによる環境の変化、睡眠時無呼吸症候群、心疾患、喘息、その他。

# 歯科の臨床でSPO2が低下する場合には、気道の狭窄、ショックなどの血流障害、中枢性の呼吸停止(静脈鎮静時や全身麻酔時に発生)など。

# 患者の意識がある場合には、大きく深い呼吸を促す。酸素呼吸はあくまでも補助的対応でいいようだ。

# 頻脈をきたした場合には、
・ 脈拍数が100を超えたとき: 歯科治療中の頻脈の原因は、精神的緊張、痛み、浸麻薬の血管収縮剤、血圧低下、初期の高二酸化炭素血症などがある。150を超えるような頻脈は心不全に至る可能性があるので要注意である。
・ 治療時の緊張や不安や痛みの軽減が必要で、場合によっては笑気の使用などが必要とされる。
・ アドレナリンは局所への浸麻でも速やかに血中に移行し、少量でも心機能に大きな影響を与える。血管収縮薬による影響と判断した場合には、治療を中断して、脈拍数が正常に戻るのを待つ。アドレナリンの血液中の半減期は数分といわれ、様子をみる時間はそれを基準とする。

# 徐脈をきたした場合には、
・ 心拍数が50を下回ったとき: 歯科治療中の徐脈の原因は、痛み、低酸素症、薬物(鎮静剤や抗不整脈剤)など。
・ 薬物による徐脈が著しい場合には、意識喪失も懸念されるので注意が必要である。

■ PETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)

・ PETCO2は、PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)とほぼ同様の値になる。これを測定するのがカプノメーター。

・ 酸素を取り入れるだけで無く二酸化炭素をうまく排出することも重要。

・ 健康な生体は、安静時でも毎分200mlもの二酸化炭素を生成する。

・ 酸素の取り入れを動脈血酸素飽和度でみるパルスオキシメーターに対して、二酸化炭素の排出からみたのがカプノメーターである。

# 測定値が正常値から逸脱したら
@ 気管挿管している場合: 一般開業医ではスルーかな。
A この場合、二酸化炭素は空気により希釈されるので、挿管時ほど正確な値は計測できない。無呼吸かいなかの判定には役に立つ。

※ そういや、指カフの長時間使用は、温度が42度くらいなんで低温やけどの可能性があるから8時間以上は使うなとか。まぁ、一般の歯科臨床ではないでしょうが。
※ それと、パルスオキシメータで常時観測すると睡眠時無呼吸症候群がわかるらしいですね。もちろん常時測定+記録に対応したパルスオキシメータでないといけませんが。
※ そういや、昔買ったおもちゃ(ZOO)。睡眠測定器ですが、どこへやったかなぁ。探してみようっと。寝てる部屋の側において観測するやつだったような。
※ 蛇足ですが、口腔外科のセンセに聞いたら、一般開業医の歯科医院ではここまでは要らないだろうというお話。

■ 参考資料

# 歯科医のためのモニタリング 口腔保健協会

# よくわかるパルスオキシメータ【日本呼吸器学会】
# パルスオキシメータハンドブック【日本呼吸器学会】
# パルスオキシメーター知恵袋 基礎編【コニカミノルタ】

# SPO2の落とし穴 〜酸素投与患者の「SpO2 99%」を見て安心してませんか?〜【EARLの医学ノート】
# 歯科治療中に息ごらえのため酸素飽和度(SpO2)が50%まで低下したWilliams症候群の1例

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