虚血性心疾患
Top 最終更新日 2017/06/21

★ 虚血性心疾患患者の歯科治療

# 狭心症: 発作時の胸痛は数十秒〜数分で痛みも軽度である。
・ 胸痛発作の持続が長くなった場合や、ニトログリセリンの使用量が増加した場合などは歯科治療は禁忌。
・ 心筋梗塞後6カ月以内、不安定狭心症、安静時狭心症: 歯科治療禁忌。
# 心筋梗塞: 数時間も強烈な痛みが続く。顎や歯の痛み。左肩から左手にかけての痛み。心窩部の疼痛。
# 労作性狭心症: 心電図 ST低下
# 心筋梗塞: 心電図 ST上昇 T波増高
# 麻酔薬の選択: キシロカイン(オーラ)、健康な人の使用上限は、1.8ml7〜8本(文献によって異なる)。虚血性心疾患の患者は1〜2本が目安。
# キシロカイン(オーラ)の特徴: 麻酔効果が高く、心筋酸素消費量が増加する。
# ワルファリンによる抗凝固療法のモニターとして利用されるINR(International normalized ratio)が2.0以下であれば、一般的な歯科治療は可能。広範囲の観血処置をする場合は1.5以下が目安。
# ワルファリン服用患者はボルタレンやアセトアミノフェンによって出血傾向が強くなる。
# ワルファリン内服患者は伝達麻酔禁忌
# ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬、アスピリン、メフェナム酸、インドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症薬はワルファリンの抗凝固作用を増強する。
# ワーファリン服用患者に対する観血的処置のガイドライン
・ できるだけ24時間以内(最高でも72時間以内)のPT−INRを確認してから抜歯などの観血処置を行う必要がある。
・ 検査施設がある病院ではこのような対応が可能ですが、一般の開業歯科医院ではなかなか難しい。主治医に問い合わせれば時間がかかる。仮に院内で採血できても検査室が無いと検査機関に出すから、結果が出るのは早くても翌日でしょ?第一、血液検査にかかる費用は保険で請求できないから持ち出しだしなぁ。

★ 抜歯と抗血栓剤

# 欧米の文献: INRが2〜4の場合: この場合は、重篤な出血リスクが小さく、休薬のリスクを考えて抜歯時の抗血栓剤の休薬は行わない。というより、抜歯に際しては休薬してはならないという考え方が多い。
アメリカのWahlの報告: ワルファリン休薬で抜歯した493例中5例で血栓塞栓症が生じ、うち4例が死亡。
アメリカのMaulazの報告: アスピリン治療中の患者が脳梗塞を発症した例において、休薬した場合は薬3.4倍リスクが大きい。抗血栓薬を休薬して抜歯した事例で血栓塞栓症が起こる頻度は1.0〜4.2%程度。
# 出血リスクの減少法:  酸化セルロース又はゼラチンスポンジ + 縫合の併用。
# ワルファリン服用例: INRが3.5以下であれば、1本の普通抜歯においては休薬してはならない。歯科治療のために低容量アスピリンの休薬は不必要。
※ 70才未満では2〜3、70才以上では1.6〜2.6程度が治療域。
# 循環器病学会のガイドライン: 抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい。
# 総合的に言うと、今後は普通抜歯においては「抗血栓剤服用下での抜歯」が標準化され、その条件下で抜歯が不可能な歯科医院においては、可能な歯科医院への依頼という流れになるのではないかと思われる。

★ 抜歯前の休薬

 一部の薬品を服用中の患者において、抜歯などの観血処置を行う場合には必要に応じて休薬する必要があるものもある。
 ただし、最近の循環器病学会のガイドラインでは、簡単な外科処置においては、休薬が不必要とされているものもある。

# 観血処置に際して
・ 抗血小板機能薬剤や血液凝固阻止剤などの使用の場合、通常の抜歯は休薬無しでもOK。普通は圧迫止血でOKだが症例によっては止血シーネを使用。
※ 私も、基本的に休薬無しで抜歯していますがそれで困ったことは無いですね。ただ、炎症反応が強いときにはそれなりの対応の後に抜歯していますが。

# ワルファリン服用患者
・ 多くの抗菌剤や鎮痛剤はワルファリンの作用を増強するが基本的には問題無い。
・ PT−INRが1.5〜3.0でコントロールされ、3.0以下ならば休薬無しで抜歯。
・ ワルファリン使用時: PT−INRが2.5を境に、高いと後出血の可能性がかなり高まる。抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドラインによると、PT−INR<3.0であればワルファリンを服用しながらの抜歯が可能。 

# 歯科治療中に狭心症の発作が出た場合
・ ニトロール(5mg) → 舌下投与はやらない。
・ 酸素呼吸。
・ 上記の処置で効果が無いときには救急車を呼ぶ。

# 歯科治療と心筋梗塞
・ 以前は心筋梗塞の発症後6カ月は歯科治療は控えたほうが良いと言われていたが、現在は1カ月経過すれば可能と考えられ、主治医に照会の上対処する。
※ これ、昔から疑問に思っていたんですが、発症後何ヶ月で区切ることは適切なんでしょうか?病状によりけりではないのでしょうかね。
・ モニター装置により全身管理を行う。酸素飽和度は95%以上あること。95%未満の場合には酸素投与により酸素飽和度を上げてから麻酔などの処置を行う。血圧はおおむね160/95mmHg以下。

★ 心筋梗塞で死亡した人の冠動脈の血栓から多くの歯周病菌が検出。だから、歯周病と心臓病との関連が言われるが、他の細菌は検出されないのかなぁ?もし、因果関係があるとしたら、無歯顎の患者は心臓病リスクが低い?

★ 「抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2015年改訂版」日本歯科医師会雑誌より
# 抗凝固薬を服用している患者数は100万人、抗血小板薬を服用している患者は600万人。
@ 抗血小板療法: アスピリン(バイアスピリン、バファリン81)
A 抗凝固療法: ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン
・ ワルファリンはPT−INRのモニタリングがあるが、その他は無し。
# 抗血栓療法継続下における抜歯
・ 原疾患がコントロールされ、抗血栓療法が適切に行われている場合には、適切な止血下において休薬無しに抜歯が可能である。
・ 抜歯時にワルファリンを中断した場合、約1%において重篤な血栓・塞栓は発症し、しばしば死の危険がある。
・ 日本における目安はPT−INR3.0以下を目安とする。
・ 24時間以内、少なくとも72時間以内のINR値を参考に抜歯を行う。可能なら当日検査を行う。
# 抗血栓療法継続下における抜歯時の止血法
・ 酸化セルロース、ゼラチンスポンジを抜歯窩にいれて縫合し、ガーゼによる圧迫止血が推奨されている。ただ、まれにはこの止血法でも止血困難な場合もある。
# NOACs服用患者の抜歯
・ 最高血中濃度時をさけて、服用後6時間以降、できれば12時間以降が望ましい。

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